「隼人さんも気付いていたでしょうけど、私はもともとお見合い同然で引き合わせられたことに不満を感じていました。でも祖父には逆らえなくて。…なんて、これは私の勝手な言い訳に過ぎないんですけど。抵抗することもせず、ずるずると流れに身を任せ続ける自分にずっと疑問を抱いてたんです。このままでいいのかって」
なんだ…? このそこはかとなく感じる違和感は。
目の前の饒舌な女性は一体誰なのか。
突き放すようにらしくもない言葉を連ねて。
___まるで自分が嫌われるように仕向けているかのように。
「それでこの一ヶ月の間冷静に考えてみたんです。そしてやっぱりこのままじゃいけないって思いました。好きでもない人と望んでもいない交際を続けることはお互いのためにもよくないって。だから____」
そこまで言いかけて志保がハッと顔を上げる。
彼女の手を掴んでいたのは無意識のことだった。
「里香子か?」
「……え?」
「里香子が志保に何か言ったんだろう? でなきゃ君が急にこんなこと言うはずがない」
それ以外に考えられない。
何故彼女がこんなにも態度を一変させたのか。その答えは簡単だ。
変えるだけの『何か』があったから。
そしてその可能性があるとすれば里香子以外は考えられない。
以前会いに来た時点で志保のことは調べていたし、何かしら彼女に接触してくる可能性もありえると警戒していた。…いや、里香子の性格を考えれば遅かれ早かれ必ずそうしていただろう。
ましてや自分が妊娠しているともなれば尚更だ。きっと勝ち誇ったように全てをぶちまけたに違いない。
…つまり、彼女は全てを知っている。

