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遠くでカラスの鳴く声が聞こえる。
それが現実なのかどうかもわからず、志保はただ虚ろな目で空を見ていた。
いつの間にか夜が明けたと思っていた空はまたしてもいつの間にかその色を変え、燃えるような朱に染まっている。
だがその全てが空虚なものに映っては消えていく。
今の志保には何一つ、何一つ心に留まるものなど存在しない。
「志保様…」
ふとどこからか名前を呼ばれたような気がして、のろりと頭を動かす。
自分の体は岩にでもなってしまったのだろうかと思うほどにどこもかしこも重くて堪らない。なんだか振り返るだけでも随分と時間がかかってしまったような気がする。
ぼんやりとそんなことを考える志保の目に、悲痛な面持ちで自分を見つめる宮間の姿が映った。いつだって背筋を伸ばして凜としている彼女が、何故かその面影が欠片もないほどに打ちひしがれている。
一体どうしたのだろうと思ったが、しばらくしてあぁ、そうか。そういうことかと妙に冷静に納得してしまう自分がいた。
まるで他人事のように、ぼんやりと。

