いつかあなたに還るまで


よろよろと力の入らない体を起こす。昨日と変わっていない衣服を見る限り、夕べはお風呂はおろか顔すら洗ってないのだろう。

「服、皺がついちゃった…」

どうでもいいことばかりが口に出てしまう。
そうしていないと余計な感情で覆い尽くされてしまうから。

「宮間に、話さないと…」

ただでさえ何かに勘づいている彼女のことだ。里香子が隼人と関係のあった女性であることにも当然気付いているだろうし、そんな彼女との面会後に志保の様子がおかしくなったともあれば、心配しないはずがない。
きっと何よりも体のことを案じているだろう。

真っ先に話すべき相手は隼人だと思っていた。
けれど、彼女の中にも命があるのだとしたら。
それは一度立ち止まって考え直さなければならないのかもしれない。



「………え…?」



お手洗いへと移動した志保の思考がそこで止まる。
…否、何も考えられなくなった。



____眼下に広がる、真っ赤な血を目にした瞬間に。