いつかあなたに還るまで


「私も隼人には振り回されたけど、もともと私達の相性って最高によかったのよ? 西園寺が相手でなければ隼人は私と別れることもなかっただろうし、あなたも充分恋愛ごっこを楽しんだでしょう?」

ガンガンと音が響いてよく聞こえない。

「それに、片親の苦労は隼人自身が誰よりもわかってるはずよ。まさか、あの人に自分の子をみすみす捨てるような真似をさせたいなんて言わないわよね?」

「___っ」


けれど、その一言だけは強烈な一撃として志保に突き刺さった。


隼人から聞かされた彼の過去。
それは長年彼を苦しめてきた重く、辛いもの。

けれど、ずっと心を閉ざしてきた彼が初めて感情を爆発させた瞬間。
それは親から充分な愛情を受けられない瑠璃のためだった。

…瑠璃と過去の自分を重ねて見ていたから。

だから、瑠璃には決して同じ思いをしてほしくないと魂で訴えたのだ。


…そんな彼の子どもを、目の前の女性も宿している…?


お腹を包み込む手が震えている。
カタカタなんて可愛らしいものではなく、ガタガタと。
握りしめていたハンカチはいつの間にかじっとりと濡れていた。

顔面蒼白になった志保に満足そうに溜飲を下げると、里香子はゆっくりと立ち上がった。

「本当にごめんなさいね? でも曖昧に誤魔化してもいずればれることだから。あなたも、彼のことを本当に想うのなら自分がどうすることが一番いいのかもう一度よく考えて欲しいの。…子どもに罪はないんだから」

「……」

「突然お邪魔してごめんなさいね。それじゃあ失礼するわ」