ポケットに入れていた紺色のハンカチにそっと触れる。
『 志保さん、ゆっくりでいいので私という人間を知ってもらえませんか? 』
昨日、二人だけで最後に交わした会話が蘇る。
彼は危険だと思う一方で、今までのどの男性とも違う何かを感じる。
そのどちらも志保の感じた本音だ。
怖いけれど知りたい…
そんな感情に包まれるのも初めてのことだった。
志保は手の中のハンカチをギュッと握りしめると、自分の答えを黙って待つ祖父の方へと視線を上げた。そしてゆっくりと息を吐き出しながら答えた。
「私もまたお会いしたいと伝えてください」

