いつかあなたに還るまで


「……それは、どういう意味でしょうか?」

やっと出せた言葉は震えてはいなかったか。
だがそんな動揺すら嘲笑うかのように目の前の女がクスッと肩を揺らした。

「どういうってそのままの意味ですけど。今の隼人とお付き合いしてるのは一応あなたでしょう? だからあなたに別れて欲しいって直談判にきた。そういうことよ」
「………」

ころりと変わった口調に言葉も出ない。いくら彼と関係があったからといって初対面の人間相手にここまで強気になれるなんて。
俄に信じがたいが、これは夢でも幻でもない。

「…申し訳ありませんが、その申し出を了承することはできません」

しばしの沈黙の後はっきりそう断ると、すぅっと里香子の目が細められた。

「…まぁいきなり押しかけて『はいわかりました』なんて言う人はいないわよね。それも予想通りよ。…でもあなた達の付き合いなんて所詮はおままごとでしょう?」
「…どういうことでしょうか」

何がおかしいのか、相変わらず里香子はクスクス笑っている。

「だってそうでしょう? あの人ったら目的さえ果たせれば相手なんて誰でもいいんだもの。大事なのは利用価値があるかないかだけ。あなたと付き合うことにしたのも『西園寺の孫娘』、その肩書きが必要だっただけ。それがなければ万一にもあなたと付き合おうだなんて思わなかったわよ」

「……」

悔しいけれどそれは事実だろう。
何故ならそれを感じていたのは他ならぬ志保自身だったから。