「お祖父様に会いに来られたのではなくて…?」
「いいえ、志保様にお会いしたいのだとはっきり仰っていました」
「……」
いつになく宮間らしからぬ様子に、瞬間的にある可能性が志保の中に浮かんでくる。
……まさか。
「ですが志保様は体調が優れませんし、今日はお帰りいただいて…」
「…いいえ。お会いするわ」
言葉を切ってそう言い切った志保に、宮間の顔色がサッと変化した。
それを見て確信する。
自分にとって見ず知らずの相手が、一体どんな立場にいる女性なのかを。
「ですが…」
「大丈夫よ。具合が悪いと言っても座って話をする分には何の問題もないわ。それに、わざわざ尋ねて来られた相手を追い返すわけにもいかないでしょう? …話を聞くだけだから。だから心配しないで」
「志保様…」
当惑を隠しきれていない宮間も志保と同じ可能性に思い至ったのだろう。
だからこそ、今の志保には会わせたくないのだ。
けれど、今帰したところできっとその人は再びやってくる。
そう思えてならなかった。
ならば今のうちに会って言い分を聞いてしまった方がいいだろう。
「…わかりました。ですが万が一何か不快な思いをなさるようでしたらすぐにお帰りいただいてください。私は部屋の外で待機していますし、何かあれば…」
「ありがとう、宮間。でも本当に大丈夫だから。ね?」
「…はい…」
納得しきれていないのは明白だったが、本人が会うというのを止めるわけにもいかず、宮間は渋々頷いた。志保はそんな宮間に苦笑いしながら、いつものように枕の下に忍ばせていた紺色のハンカチを取り出すと、キュッと握りしめてベッドから足を降ろした。

