誰にも不安を吐露できないというのは思っていた以上に辛いことだった。
いつもなら自分の中だけでうまく消化できることでも、ここに命があるともなれば話は別だ。

隼人に話せないならせめて宮間だけでも…と思わなかったわけじゃない。
けれど、一番最初に伝えるべきなのはやはり彼だと思えてならなかった。
というか自分がそうしたかった。

それに、医者が言っていたように実際何かできることがあるわけでもない。
あるとすれば、この子の生命力を信じて自分を大切にするだけ。


とは言っても勘の鋭い宮間のことだ。
おそらく何かしら志保の異変には気付いていることだろう。
もしかしたら妊娠していることもわかっているのかもしれない。

けれど彼女は志保が何も言わないということを尊重してくれている。
それは志保は志保なりに考えがあってそうしていること、そして本当に必要な時には必ず宮間に助けを求めることもわかっているからに他ならない。


彼女ほど志保のことを理解出来ている人間はいないと断言できる。
そんなかけがえのない存在が多くを聞き出すことなく静かに見守ってくれている。

その事実だけで、今の志保には何にも代えがたい力となっていた。