これまでただの一度も後ろを振り返ることなどなかった。
ただがむしゃらに、復讐だけを道標に突き進んで来た。
けれど進めども進めども、母は笑ってはくれない。
もう夢の中でしか会うことができないのに、いつでも彼女は泣いている。
私のせいでごめんなさいと言いながら、苦しそうに、悲しそうに。
その理由がようやくわかった気がした。
母は復讐など望んではいない。
復讐の先にある未来になど何の幸せもないことを知っているから。
何故母があそこまでぼろぼろになりながらも耐え続けることができたのか。
それは他でもない愛する我が子に幸せになってほしい、ただその一心だったのだと。
それだけを願ってこの世を去った母が笑ってくれるはずなどなかったのだ。
何故こんな簡単なことに気付かなかったのか。
…いや、わかっていたのに、それに気付かないフリをしていただけだ。
自分さえいなければ母はあんなに苦しい思いをしなくてすんだのではないかと何度も何度も自問自答した。だからこそ、復讐することをやめてしまっては、自分が生きている意味がないような気がして怖かった。
今目の前に母がいればふざけるなと顔を真っ赤にして怒り狂うだろう。
そんな母だと誰よりも知っていたのに。
愚かな自分はそれに気付くまでにこんなに回り道をしてしまった。

