いつかあなたに還るまで


「普通に働いてみたいなという願望はあります。…でもきっとそれは無理だと思います。おそらく花嫁修業に専念することになるんじゃないかと」

あははと苦笑いする志保の姿を隼人はじっと見つめている。相づちするように笑ってはいるが、その瞳の特が全く笑っていないことに志保は気付いていた。


部屋に入って来たときから感じる何とも言えない違和感。
何故この人がこのような場にわざわざ足を運んだのだろうかと。

見た目に関してはもう言わずもがな、仕事だって世間的に見ればエリート街道をひた走っているような人が何故?
眼鏡の奥に隠された瞳は一度だって心から笑ってはいない。
祖父は何も感じてはいなかったようだが志保は気付いていた。

___彼が望んでこの場にいるわけではないのだということを。

時折射貫くような視線で自分を見ていることに志保は息苦しさすら感じていた。


「志保さん? どうかしましたか?」