彼は誰よりも痛みを知っている人なのだ。
だからこそ、瑠璃のことにもあれだけ真剣にぶつかったのだろう。
親の自己満足で振り回される子どもの苦しみ、そしてそんな痛みにすら気付こうとしない親への怒り。彼はその全てをわかっているから。
瑠璃はまだ小さい。
もしかしたら、彼らの未来はこれから幸せな方向へと変わっていくかもしれない。あるいは永遠に何も変わらないかもしれない。
だからこそ、中途半端な情けをかけるようなことだけはするなと訴えたのだ。
あの子には必要以上に悲しい思いをして欲しくないから。
あの親にその想いが届いたかはわからない。
けれど、誰かが気付かせなければきっと何も変わることはない。
あの魂の叫びこそ、彼の本当の姿。
そうわかったら、彼の目的などどうでもいいことになってしまった。
これまで迷っていたことが嘘のようにさっぱりと。
たとえ自分を求めてくれているのではないとしても、自分が彼の傍にいたい。
大切なことはそれだけだと気付いた。
もしもこの先何かに傷つき、泣くようなことがあっても、絶対に後悔なんてしない。
それが自らが心の底から望んだ結果に得た未来ならば、決して。
だから、今目の前にいるこの人を信じてついていこう。
あなたが私を必要をしてくれる限りは、いつまでも_____

