「………君と付き合うことにしたのだって、本当は____」
少しの沈黙の後、決意したように何かを言いかけた唇にそっと自分の指を添えた。
その行動に、隼人は驚きと戸惑いを滲ませる。
「何も言わなくていいです」
「……え…?」
唇に触れていた指をゆっくりと離すと、志保はいつもと何ら変わらない笑顔で頷いた。
「隼人さんがどういう目的をもって私と一緒にいるかなんてどうでもいいです。どんな理由があっても、私にとってこうして隼人さんと一緒にいられることは嬉しいことに変わりはないんですから」
「……志保?」
「それに、私は自分の目で見たことを信じます。何を考えているのかわからない隼人さんも、子どものように笑う隼人さんも、そして苦しみながらもこうして全てを打ち明けてくれた隼人さんも。私にとってはどれも変わらない隼人さんの一部ですから。私がそんな隼人さんの傍にいたいんです。だから、隼人さんがどんなことを思って私と一緒にいるかは関係ありません。あなたに心の底から嫌われていない限り、ずっと傍にいられたらいい、そう願ってます」
「志保…」
言った後に照れくさそうに頬を染めたのと同時にきつく抱きしめられていた。
「志保……志保っ……!」
言葉もなく、ただひたすらに名前を呼ぶ彼が愛おしいと思った。
ううん、言葉なんていらないとすら思った。

