いつかあなたに還るまで



「今までそうすることに何の躊躇いもなかったし、立ち止まって考えることすらなかった。本気で、心の底から自分のすべきことはあいつらに復讐してやることだって信じて疑わなかった」


ぐ…と志保の手を包む隼人の手に力がこもる。


「…でも、そう決意した日から毎日母親が夢に出てきては泣くんだ。ごめんなさいごめんなさいって。死んでからもずっと悲しそうに謝り続けてる。俺はその意味をまだ復讐が果たせてないからだとずっと思ってた。だから今まで以上に必死に這い上がらなければって。……でも…」

ゆっくりと上げられた瞳は悲しみに揺れていた。


「志保に……君に出会ってから何かがおかしいんだ」


「…隼人さん?」

何かを畏れるように、さらに強い力で手を包み込まれる。
まるで離れていかないでくれと言っているかのように。


「これまで何の疑問も抱かなかったことの一つ一つに、本当にこれでいいのかと自問自答する自分がいる。当然だ、それでいいに決まってると言う自分と、お前は間違ってると反論する自分。今までじゃありえなかった感情が俺の中でぐるぐると渦を巻いてるんだ。…自分でも、何が正解かわからなくなる時があるほどに」

「隼人さん…」



かつて彼がこれほどまでに素顔をさらけ出してくれたことがあっただろうか。

…そんなことは考えるまでもない。

こんなに苦悶に満ちた表情に胸が痛くなる一方で、その姿を心の底から愛おしいと思う。
そして守ってあげたいという感情で満たされていく。


こんな自分でも、彼の心に寄り添うことができるのならば。