いつかあなたに還るまで


亡き人を弔う場にもかかわらず、おぞましいほどの口汚い言葉で母を罵り、暴れ回り、男はそんな妻を必死に宥める。まさに地獄絵図のような修羅場と化した。



こんな奴らに母の人生は壊されたのかと、怒りや失望を通して笑えてしまった。



その日を境に隼人は変わった。

母の無念を晴らすのは自分しかいない。
これまで自分達を罵り、蔑んできた連中をいつか見返してやる。
隼人が新たに見出した己が生きる意味は、その復讐心だけとなった。


自分を犠牲にしてまで残してくれた母の僅かな遺産を無駄にすまいと、周囲の雑音など一切耳に入れず、目的を果たすべくただひたすらに前だけを向き続けた。
最高学位の大学に進学し、来る日も来る日もバイトと勉学に明け暮れ、寝る間も惜しんで這い上がった。そのために利用できるものは全て利用してきたし、それを躊躇うことすらなかった。



その後、彼の生い立ちはいつまでもついて回った。
どこから聞きつけたのか、それを知った人間の多くが彼を蔑んだ。その動機は、おそらくそれ以外で彼に勝てる要素がなかったからだろう。
あるのは金とプライドだけ。
中身のない人間ほど、嫉妬という名の大義名分の下、隼人を見下し敵視した。