いつかあなたに還るまで



「とりあえずせっかくですからお料理をいただきませんか?」

背後からかけられた声にハッとする。

「あ…ごめんなさい。そうですね」

慌てて振り返ると隼人も立ち上がった状態で志保を見ていた。
その顔には笑顔を携えて。
志保も急いで席に着くと、向かい合って再び料理を口にし始めた。

「すみません、突然こんな機会を設けてしまって。志保さんが戸惑うのは当然のことだと思います」
「いえ、そんな…。すみません、私も気の利いた会話の一つもできずに」

「大学は楽しいですか?」

再び俯きがちになった志保に隼人が声をかける。

「え? …はい、勉強することは好きなので」
「今は4年生ですよね? 卒業後は何かお考えが?」

何気なく聞いたつもりの質問だったが、その言葉に志保の顔が曇ったのを隼人は見逃さなかった。だが志保はすぐに笑顔を浮かべて見せる。