籠の鳥…
志保の脳裏に閉じ込められた鳥がもがいている姿が浮かんだ。
「今は女性もどんどん社会進出する時代ですからね。大学で学ぶことは何一つ無駄にはなりませんよ」
不意に耳に入ってきた言葉に顔を上げる。
目の前ではニッコリ笑いながら隼人が頷いていた。
「あ、りがとうございます…」
なんだかそれ以上直視することができずに志保はすぐに俯いてしまった。
「ふ、む…。私がいるよりも二人でゆっくり話した方が話も弾みそうだな。志保、私は席を外すから気を使わずに過ごしなさい」
二人の様子を見ていた昌臣はそう言うと突然席を立ち始めた。
全く予想外のことに志保は慌てて引き止める。
「お祖父様?! 待ってください、いきなり二人きりだなんて…!」
「なぁに、緊張するのもはじめだけだ。隼人君は話も上手な青年だから何も心配することはない。若い者だけでゆっくりしなさい。宮間に部屋の外に待機するように伝えておくから」
戸惑う志保になど構うことなく昌臣は笑顔で部屋を後にする。
あっという間に部屋には隼人と呆然と立ち尽くす志保だけが取り残された。

