だが音に反していつまで経っても覚悟していた痛みを感じない。
無意識のうちに目を閉じていた志保がゆっくりと瞼を上げると、目の前には自分を守るかのように立ち塞がった隼人の背中があった。その手は母親の右手を掴んでいる。
「何すんのよ! 離しなさいよっ!!!」
余計に怒り狂った母親はその手から逃れようと暴れ回る。
だが決して離そうとしない手の強さに次第に痛みで顔を歪ませた。
「あんた傷害罪で訴えるわよ!! だいたいあんた達揃いも揃って何なの?! まるで人を悪人のように仕立て上げて! あたしが一体何したって言うの?! 信じてた施設にはこんな目に遭わされて、赤の他人から言われない非難までされて。あの子のせいであたしがどれだけ犠牲を払ってるかわかってるの?! あの子のためだと思って時間を作ってやってるのに、こんな我儘な暴走までして。あの子さえいなければ私だってもっと自由でいられたのに___!」
「 ふざけるなっ!!!! 」
言葉を断ち切るような叫び声に、その場にいた誰もが肩を竦めた。
信じられないようなその声を上げたのは……他でもない隼人だ。
横顔しか見えなくてもその目が怒りの炎で燃えたぎっているのがわかる。

