いつかあなたに還るまで


どこか気後れしている志保とは対照的に、昌臣と隼人の会話は弾む。

「隼人君は最近まで海外にいたと聞いたが?」
「はい。半年前までは東南アジアを中心に各国を回っていました。主に国際会議に携わっていたんですが…今年に入って国内での仕事が主になりまして」
「それであの日のパーティに出ていたわけか」
「はい。帰国してすぐにこのような出会いがあったことに感謝しています」

手元の料理を口にしながら2人で進められる会話を聞き流す。
隼人は最初の挨拶以降一度も口を開いていない志保に視線を送った。

「志保さんは? 今は大学に?」

「えっ?! …あ、はい。そうです。S大で経済学を学んでいます」
「私は大学になど行かなくてもいいと言ったんだがね。どうしてもと言うからやむを得ず許可したんだ」

昌臣の言葉に志保の顔が曇る。
祖父は志保が進学することを快く思っていなかった。いずれは誰かに嫁ぐ身、わざわざ進学する必要性などないという古い考えの持ち主だ。
理由はそれだけではない。志保が進学することで余計な刺激を受けることを恐れているのだろう。