いつかあなたに還るまで



「失礼します。志保様をお連れしました」

宮間に続いて来客用のダイニングルームに足を踏み入れると、視線の先ですぐに立ち上がる男性の姿が目に入った。
すらりとした長身に仕立ての良さそうなスーツ、シルバーの細いフレームのスタイリッシュな眼鏡はいかにも仕事ができるオーラを醸しだしている。
短めの黒髪は整髪料で綺麗にスタイリングされ、誰の目から見ても端正な顔立ちは、わざわざこんな場を設ける必要などない類いの男性であることを如実に語っていた。


「志保?どうした?何かあったのか?」

暫し呆然とその場に立ち尽くしていた志保に祖父である昌臣が訝しげに声をかける。
その声に弾かれるように意識が戻ってきた志保は慌てて前を見た。

「いえ、ごめんなさい。何でもありません」
「そうか、ならいい。志保、こちらは霧島隼人君だ。29歳で外務省に勤務されている」

その言葉の後に長身の男性が一歩前へ出た。