「まぁあなたも相当な野心家だものね。西園寺の財力が魅力的なのはわかるけど…正直あんな子どもの相手なんて嫌なんでしょう? あんならしくない顔までしてご機嫌とりしなきゃならないなんて」

何も言わないのをいいことに里香子の暴走は止まらない。
喋るほどに隼人の目が鈍い色へと凍り付いていっているのにも気付かずに。

「あなたが女嫌いなのは知ってるわよ。愛だのなんだのを一切信用してないってことも。だったら尚更あんな子なんてやめときなさいよ。後々面倒なことになるのは目に見えてるじゃない」
「……」

「あの子を選ぶくらいなら私の方がよっぽどマシよ。西園寺までとは言わないけどうちだってそれなりに裕福だし、それに何よりも大人同士、色んな意味で満足させてあげられるわよ? あなただってそれは知ってるでしょう?」

うふふと赤いルージュを歪ませて微笑みながら、里香子は豊満な胸を押しつけるようにして隼人の腕に纏わり付く。その表情は悦に入っている。

どうやら彼女の中ではこれで全てがうまくいくと思っているらしい。
そこまで舐められたものかと、気付けば自分もククッと肩を揺らしていた。
それが自分に向けての笑みだと思い込んだ里香子はますますご満悦そうだが。