「……何故ここにいる」

目の前に立ち塞がった女に、隼人は地を這うような低い声で露骨に嫌悪感を示す。

「そんなに怒らなくてもいいじゃない」
「怒らせる理由がないとでも?」

喋れば喋るほど眼光鋭くなっていく男を前に、女はこれみよがしに溜め息をついた。

「…ごめんなさい。勝手に家を調べて押しかけたのは謝るわ。でも仕方ないじゃない。隼人ったらあれ以降何の連絡もつかないんだもの」
「取る必要なんかないんだから何の問題もない」
「えっ? ちょっ…待ってよ!」

すげなく言うなりあっさり横を通り抜けていく非情な男を女が慌てて引き止める。腕を掴まれた隼人が鋭く女を睨みつけたが、女___里香子はそれでも怯まない。


「元カノに対してちょっと酷すぎるんじゃない?」
「酷いのはどっちだか。ルールを守らない奴には言って無駄なら行動で示すしかない」
「はぁ…今更だけどあなたって本当に酷い男ね」
「わかってるならこんなところで無駄な時間を費やすのはやめるんだな」

とりつく島もないその様子に、さすがの里香子も呆れ返る。


「あの子に向ける顔と全然違うのね」