いつかあなたに還るまで


宮間は下手に志保に期待を持たせるようなことは言えなかった。
志保がそう思いたくなるのにも理由があるからだ。

志保がパーティなどの社交場で出会った男性に嫌な思いをさせられたことは一度や二度じゃない。それは2年前のお見合い相手も例外ではない。
志保の存在はその世界では広く知られており、財産目的に近寄ろうとする輩は後を絶たない。小娘一人くらい簡単に取り込めるだろうと足元を見ているのだ。

甘い言葉で近付いてきたかと思えば、どうやってもなびかない志保に痺れを切らして態度を豹変させる連中が数多くいる。
表と裏の顔を使い分ける汚い大人を物心ついた頃から何度となく見せつけられ、志保はこの世界になんの夢も希望も抱けずにいた。

それでもこの家の孫娘として、いつかはそれなりの相手と結婚しなければならないという覚悟ももっている。いや、諦めと言った方が正しいのかもしれない。


だからこそ自分ができる限り志保の傍で見守ってやりたい。
志保には何としても幸せになって欲しい。

それが宮間の偽らざる本音だった。