「遅くなってしまってごめんなさいっ!!」
らしくないほどに取り乱しながら駆け寄ってくる女の姿を視界に捉えるなり、それまで終始無表情を貫いていた男の目元がふわりと綻んだ。思わず近くにいた女性陣がほぅっと見とれてしまうほど、その変化していく様は実に魅惑的だ。
「ご、ごめっなさっ…ぜぇ、はぁっ…!」
「あぁあぁ、そんなに焦らなくて大丈夫ですから。というかほぼ時間通りじゃないですか。全然遅刻じゃありませんよ」
「で、でもっ…」
数分とはいえ遅刻は遅刻。
しかも好きだと気持ちを自覚した直後に遅刻するなんて、相変わらず自分の鈍くささを呪いたくなる。
その時、ハーハー息を整える志保の唇にスッと伸びてきた指が触れた。
ドキッと心臓が跳ね上がったのは言うまでもなく。
(まっ…まさか…キス、される……とか?!)
最後に会ったときのことが一気にフラッシュバックしてバックンバックン大変なことになってしまっている。
「あ、あのっ…」
「そんなに僕に会うのが楽しみでしたか?」
「…えっ?!」

