「私の7歳の誕生日が近づいたある日、どこでも好きなところに連れていってあげるよと言われて…私は水族館に行きたいと答えました。両親は二つ返事でOKして言葉通り水族館に連れて行ってくれました。本当に楽しくて楽しくて。私は世界一の幸せ者だって思えるくらいに楽しくて。でも……その日の帰り道、私達は事故に巻き込まれました」
ハッと隼人が息を呑んだのがわかった。2人で水族館に行ったとき、彼女がどこか思い詰めているような表情に見えたのは、まさか___
だが志保はそちらを見ることはなく、どこか遠くを見つめながらぽつりぽつりと言葉を続ける。
「それからの記憶は正直あまりなくて。両親が死んで…私だけが助かったと理解できたのは…それから随分経ってからのことだった気がします」
「……」
「両親を亡くした私のところへ祖父が来たそうなんですが…そのことも私は覚えてなくて。でも聞いた話によれば西園寺家に引き取られることを私は激しく拒絶したみたいで…。精神的に不安定な私を見かねた祖父は、最終的に知り合いの運営する施設へと預けることを決めたそうです」

