いつかあなたに還るまで


愛さえあればどんな困難も乗り越えられる___
ドラマのようなハッピーエンドならばさぞ素敵な話だが、現実はそう甘くない。

「駆け落ち同然で家を出た母には厳しい現実が待っていて…。当時祖父の怒りは母だけではなく私の父へも向けられて。行く先々で就職を断られて…あるのは日雇いの仕事が精一杯で、日々の生活もいっぱいいっぱいでした。とは言っても幼かった私の記憶は曖昧なんですけど…」
「……」

狭いアパートにひっそりと身を寄せるように暮らしていたのは覚えている。
けれど小さな子どもにとってはむしろその狭さが嬉しくて。毎日親子3人川の字になって布団で眠るのが楽しくて仕方がなかった。

「ご飯だって質素なものばかりでしたけど、私の誕生日だけは信じられないくらいにご馳走が並んでいて。今思えばもしかしたら数週間分の食費を使ってたんじゃないかってくらいの贅沢をさせてくれて…」

お金も余裕もない日々だったけれど、
それでも本当に…本当に幸せだったのだ。

「祖父は経済的に追い込めば母が戻って来てくれると信じてたんだと思います」


けれど祖父の狙いは完全に外れてしまった。
全く思いもよらない形で。