いつかあなたに還るまで



「……え?」

聞き返されたことを驚愕されたと受け取った志保は、どこか寂しそうに微笑んだ。何故そんな顔を? と隼人が口を開こうとするよりも先に、志保は自分の生い立ちについて語り始めた。

「場所は違いますけど、私も児童養護施設にいたんです」

ここで初めて志保の言ったことが理解できた隼人はやはり驚きを隠せなかった。

彼女が施設出身…?
何故?
もしかして…

「会長は、あなたの…」
「いえ、祖父とはちゃんと血の繋がりがあります。祖父の娘が私の母なので」
「…そうですか」

そのことにほっとしたのは己の目的故か。それとも___

「…西園寺家の人間としていつかは立場ある方と一緒にならなければならない。それは幼い頃から呪文のように言われ続けていたことだったと母は言っていました。幼かった私はろくに意味もわからずそれを聞いてましたけど…いつもどこか寂しげに笑っていた母の顔だけは今でもはっきりと覚えています」
「……」

そして私を膝に抱きながら母は必ずこう続けたのだ。

「『でも私はあなたのお父さんと出会ってしまったの。与えられた運命に逆らってでも一緒に生きていきたい。それがあなたのお父さんだったのよ』って。私にとっての呪文は母のこの言葉でしたね」

今思えばなんて壮大なノロケだったのだろうと笑えてしまう。