いつかあなたに還るまで


それは素朴な疑問だろうと思った。
児童養護施設など、意図して行かなければそうそう縁のある場所ではない。どこでも好きな所へと言われておねだりされた場所がここともなれば、何故? と思うのは当然の感情だろう。

志保は一瞬だけ考えてしまった。話すべきか否かを。
…ただ、彼に素顔を見せて欲しいの望むのならば、自らもその壁を取り除く努力をしない限りはその願いは叶わない。確信めいた思いがあった。

話してどう受け取るかは彼次第。
それで敬遠されるようならば元々それまでの繋がりしかない運命だったと言うこと。

…けれど、彼ならそんなことにはならない。
何故かはわからないがそう思えた。

「……他人事だとは思えない、からですかね」
「…え?」

落としていた視線を上げると、フワリと2人の間を吹き抜けていった風が志保の長い髪を揺らす。


「……私も施設の出身なんです」


風になびく美しい髪に目を奪われていた隼人は、一瞬その言葉の意味を理解できなかった。