志保にとって宮間は唯一心を置けるかけがえのない存在だ。
既に両親が他界している志保には身内は祖父しかいない。
だがその祖父との関係も決して良好だとは言えない。昔から多忙で邸に帰ってくることも少なく、顔を合わせても食事の時に軽く会話をする程度。
悪いというわけでもないが決して良くもない。
互いにどう接すればいいのかわからない、そう言った方が正しいのかもしれない。
そんな志保にとって姉でもあり親代わりでもあるのが宮間だ。
彼女は志保が中学に上がった頃にこの邸にやって来た。当時彼女はまだ大学生だったが、高級クラブでバイトをしている頃に祖父と知り合い、やがて志保の教育係へと抜擢された。
比較的歳の近い宮間の存在は志保にとっては友人であり、姉であり、そして親代わりでもある。
誰よりも信頼し、誰よりも我が儘を言える。
今の志保にとって誰よりも大切な存在だった。

