「それにしても、なんていうか…」
シーンと静まりかえったリビングに立っていると、何故か何とも言えない寂しさが襲ってくる。その原因は何だろうと考えると、すぐにその答えに辿り着くことができた。
…ここには生活感というものがあまりにもなさ過ぎるのだ。
驚く宮間に拝み倒してなんとか聞き出したのは隼人の住むマンションの住所だった。新しくはないが1LDKの間取りは一人暮らしするには充分過ぎる広さだ。だが実際はそれ以上に広く感じるのは、置かれている物の数が圧倒的に少ないからだろう。さっきは必死で周りを見る余裕などなかったが、こうして冷静になって見てみると、リビングに置かれているのはソファーとローテーブル、テレビだけ。後は申し訳程度の本棚が置かれているのみだ。
寝室もベッドと大きな本棚があっただけのような気がする。
「男の人の一人暮らしってこんなものなのかな…」
当然ながら男性の部屋に入ること自体が初めての志保には知りようもない。
けれど、ここがあまりにも無機質で寂しい空間に思えてならなかった。
…そう。
まるで彼の心の奥底を映しているようで____
「冷たいっていうよりも、どこか寂しさを感じる…」

