いつかあなたに還るまで


「…ありがとうございます、志保さん。じゃあお言葉に甘えてもいいですか?」
「っ、もちろんです! こちらこそお世話させてもらってありがとうございます!」
「ふっ、何ですか、それ」

「あ、あれ? 何か変なこと言ってしまいましたね。と、とにかく! 叩き起こした私が言うのもほんとにおかしな話なんですけど、今はぐっすり眠ってください。時々様子だけ見に来させてもらいますから、欲しいものやしてほしいことがあったら何でも言ってくださいね」
「…はい。ありがとうございます」

ふわりと漂う穏やかな空気にますます心臓が落ち着かなくなる。
相手は病人で苦しんでるというのに、自分は一体何を考えてるのやら。
しっかりしろ!!

「じゃあおやすみなさい」

「…おやすみなさい」

布団を首元まで掛けると、やがて隼人が静かに目を閉じた。相当きつかったのだろう、長くせずしてスースーと寝息が聞こえ始めた。

「…おやすみなさい、霧島さん」

彫刻のように美しい寝顔にもう一度そう囁きかけると、志保は音をたてないようにゆっくりと寝室を後にした。