いつかあなたに還るまで


「ちゃんと宮間に聞いて選んだ薬なので安心してください。えっと…ごめんなさい、少しだけ体を起こしてもらうことはできますか?」
「え…あの、志保さん」
「辛いのに無理をさせてしまってほんとにごめんなさい。ちょっとだけ失礼しますね。よいしょっ…と」

状況についていけていない隼人に構うことなく志保は大きな背中に手を差し込むと、そのまま力一杯引き上げる。いつもとはまるで別人のように積極的な彼女の姿に、隼人はただただ驚く。

「これを飲んでもらえますか? 飲み物は…これをどうぞ」
「あ、ありがとうございます…」

あまりにも必死な様は口を挟むことが無粋だと思わせるには充分過ぎて、隼人は言われるままに差し出された薬とスポーツ飲料を手にした。じっと見守られる中ゴクンと一気に錠剤を流し込むと、何も飲まず食わずでひたすら横になっていた体中に水分が染みこんでいくのを感じる。

「はぁ…おいしい…」

薬を飲むなりそのままゴクゴクと飲み干していく姿に、志保はほんの少しだけ安堵の息を吐き出した。