いつかあなたに還るまで


大きな声を出す志保を初めて目の当たりにして相当驚いているが、当の本人はそんなことには全く気づけない。

「くっ…よいしょっ…! はぁっ…!」

互いにフラフラしながらもようやく寝室までやって来ると、そのまま倒れ込むようにして隼人の大きな体がベッドに沈み込んだ。寸前に手を離していた志保の体は真横のフローリングに膝から落ちていく。
成人男性を支えることがこんなに重労働だとは思いもしなかった。

「すみません…私のせいで、大丈夫ですか…?」

体がきつくて起き上がれないのか、横になったまま隼人が心配そうに目線だけをこちらに向ける。

「全然大丈夫です。むしろ謝らなければならないのは私の方です。元はと言えば私が勝手に押しかけて来たことが悪いんですから。具合が悪いと気づいていたのだから来るべきではありませんでした。本当にごめんなさい」
「そんなことは…」
「あります。でも結局迷惑をかけてしまったのならばきちんと最後まで責任をもちたいと思ってます」

「…え?」

本当はまだ力の入らない体を奮い立たせて強引に立ち上がると、志保は虚ろな瞳で自分を見上げる隼人にニコッと微笑みかけた。