「えぇっ、今なんて言ったの?! 宮間っ」


雲一つない青く澄んだ秋の空に、悲鳴とも思える声が響き渡った。



「ですから、旦那様が志保様に会わせたい男性がいらっしゃると…」

食後のティータイムでゆったりと心をリラックスさせていた時、中学に上がった頃から世話係としてずっと仕えてきた腹心中の腹心である宮間の口から信じがたい言葉が飛びだした。


「嫌よっ! 絶対に嫌っ!! 私はお見合いなんてしないって何度も言ってるでしょう?!」


ガバッと立ち上がると、その勢いで倒れた椅子を気にもとめずに、その細い体からは想像もできないほど大きな声で叫んだ。


西園寺志保 21歳

日本でも有数の大企業のトップに君臨する西園寺昌臣の孫であり、小学校から今現在に至るまで私立のエスカレーター式学校に通うお嬢様である。

日本人としては平均的な背丈だが、クォーターの母親の遺伝子を受け継いでいるのか顔はまるで西洋人形を思わせるような顔立ちで、長い睫にはっきりした二重の大きな瞳は少し茶色がかって見える。
綺麗に手入れされた髪は胸の下辺りまで届くほど長く、彼女を知らない人でも一目でお嬢様だと思ってしまうほどの容姿をしている。

だが、今彼女はそんな美しさに全く見合わない形相で怒り狂っていた。