「久しぶりだなぁ?元気だったか?」
誰?貴方は私のことを知ってるの?
「おいおい。忘れたのか?ひでぇな。」
わからないよ。それとも忘れちゃったのかな。
「俺だよ俺。サクト...。」

パチッ

いつもと変わらない天井。
起き上がるとベッドが、ギシギシ言う。
私は浅間 小夜。
高校1年。
なんだけど、今とてもよくわからない気持ちになっている。
わからないと言うか...なんだかはっきりしなくて気持ちが悪い。
一つ、夢に出てきたあの、サクトという少年のことを私は知らない。
ここ一週間私の夢に出てきて眠りを妨げている。
いや、ちゃんと寝ているけど目覚めが気持ち悪くて最悪なのだ。
彼は一体誰なんだろう?

「私...人をわすれたことはないんだけどな...」

「小夜ちゃん!起きてる?早くしないと遅刻しちゃうわよ!」

「は、はぁーーい!今行く!」

まぁ、今考えてもわかることじゃないよね。
私は学校の制服に着替えるとリビングへの階段を下りた。


通学路を歩いてると、後ろからドタドタッっという音が聞こえた。
そしてそのまま私に突っ込んで来る。
あ、来たな?でも、私はスルリとかわす。

ドテッ

「おはよう。どうしてあんたはふつーに登場できないの。」

「う、うるせー!なんでよけんだよ!おはようのハグだろ!」

「よけるにきまってるでしょ!あんたなんかに抱き着かれたら私、倒れる。」

「嬉しくてか?なんだ、照れ屋だな、小夜は!」

「あんたはおめでたいね。んなわけないでしょ。重くて押し倒されるって意味よ」

そういいながら転んだままのそいつに手を差し出す。

「おう、ありがとうな!」

「いーえ。遅れるから行くよ。」

「おい、待てよ!」

こいつは私の腐れ縁の夏木鞘斗。
言っておくけど幼なじみではない!!
いつだったかはわすれたけど、鞘斗が転校してきたのだ。
そう、転校してきたんだ!うん!

「ねぇ、鞘斗。あんたじゃないサクトなんて私、知らないわよね?」

「.......。何言ってんだ、お前。まず言葉の意味がわからねぇよ。」

「そうよね。忘れて。やっぱりいいから。」

「何なんだよ!途中でやめるとか気持ち悪いことしてんじゃねぇよ!」

「だって、わかってくれなさそうだから。いくら説明しても。私が疲れる。」

「で、出来るだけ分かれるようにど、努力するから..よぅ。」

「歯切れ悪いわね。まぁいいわ。分かってくれるとありがたいわ。1回でね。」

私は気になるあの夢とその夢に出て来る「サクト」という男について話した。
まぁ、話したところで「俺の夢を見てるのかぁ~」ってなってウザいことになりそうだけど。

「......ってなわけよ。分かった?」

「お、俺の夢を「あーはいはい、その辺は間に合ってるから」

「..........そのサクトって奴は俺のことではないってのはんかったんだけど。」

「あ、うん、そんだけ理解してくれたんならいいわ。」

「まぁ、お前が、忘れてるだけなんじゃねぇ?」

「そうならいいけど。」

そんな話をしているうちに学校にはついてしまって長い長い一日が始まった。



「わりぃ!俺、委員会入っちまって会議なんだ!先帰っててくれよ。」

「別に待ってたわけじゃないんだけど。分かったわ。じゃあね。」

一人で帰れるってなんて楽なの。
私、今それをすごく実感してます。
いつもは隣で鞘斗が、ギャーギャーうるさいから!
なんていいの~。

「なんていいの~。」

「何がいいんだ?」

「へ?」

あっれぇ~。
鞘斗は学校だし.....
誰が私の独り言に返事をしたの?

「お前が、浅間小夜か?」

「なんで私の名前...」

「サクトが待っている。行くぞ。」

「は?はぁ~!?」