run and hide



 ――――――――だけど。

 この首筋が、もうちょっと見たい。つい指でさすってしまう。風を送り髪をどけて、さらけ出した白いうなじから目が離せない。

 ここに・・・・・口付けをしたら。

 翔子は、どんな反応をするだろう―――――――――


 ハッとした。

 思わず唸り声をあげて、自分を牽制していると、寝しなのようなぼーっとした声で、翔子が、何?と聞いた。

 咳払いをしたいのを堪えて、普通の声で返す努力をする。

「・・・いや、何でも」

 翔子は気にしなかったようだ。

 指が勝手に動いて翔子のうなじを撫でる。急に緊張してきて、俺は体温が上がったのを感じた。

 すると、翔子が言ったのだ。

「・・・はあ~・・・・気持ちいい・・・」

 その、うっとりした声色が、まるで男に抱かれている時のあえぎ声に聞こえて、鼓動が止まるかと思った。

 ちょっと待て待て待て待て!!

 落ち着け、とバレないように小さく呼吸をする。

 取り合えず、このヤバイ行動を止めよう。長年の女友達をまさかここでいきなり襲うわけにもいかない。

 体はすっかりその気になってしまってて、焦った。

「・・・終わり」

 何とか呟いて、ドライヤーのスイッチを切った。