run and hide



 わーい、と喜んでいたら、洗面所から戻ってきた正輝が財布を手にして玄関に向かった。

 いい匂いが玄関から漂ってくる。

 風呂上りの状態で人前に出るのがいやだったので、私は居間で待機していた。

 あああ~・・・もう、本当に空腹。早く早く!

 素敵な素敵なピザを持って、正輝が笑顔と共に登場した。その光景だけで、色んな要素が組み合わさって、もう一回惚れるかと思った。

 ・・・危ない危ない。思わず片手で額を叩く。落ち着くんだ、私。

「いただきまーす!」

 向かい合わせになって座り、二人で勢いよくピザを食べだした。美味しい!と同時に声を上げる。

「うわあ~美味しい!何かピザ、ひさしぶり。一人じゃ頼まないもん」

 私が言うと、正輝が頷いた。

「そうだよな。俺も彼女と別れてから食べてない。そう言えば」

 ・・・・・くそう。聞きたくなかったぜ、そんな台詞は。

 テレビをつけ、そのバラエティ番組でまた笑いながらご飯を食べる。お風呂で温まり空腹も満たされて、幸せな気分になっていた。

 やっぱり動物だわ。空腹だとムカつくことも満腹だと許せることってたくさんある。

「ビール、飲む?」

 気分がよくなってそう聞いたら、正輝がまたあの微妙な顔で私を見た。

「あん?」

 首を傾げる私に、うーん・・・と煮え切らない態度で唸り、指をティッシュで拭いて立ち上がった。