run and hide



 正輝はホッとしたように頷いた。

「30分だって。もうあと15分ほどだけど」

「洗濯と乾くのに、そのくらいかかるから丁度いいね」

 どうせ会話をするなら狭い台所である必要はないしな、と、肩の力を抜いて私は居間へいく。後ろから正輝がついてきた。

 そして、呆れたような口調で私に言った。

「お前ドライヤーしてないの?髪短くしたからって、それじゃあ風邪引くぞ」

 え?と思ってる間に洗面所からドライヤーを持ってきた正輝が、ほれ、座れ、とソファーを指差す。

「え、いいよ。自分でやるし」

「まあまあ、俺うまいんだぜ。実家の犬のドライヤーは俺担当だったんだ」

 犬か、私は。

 友達かペットかよ。ムカついたけど、もうお腹が減りすぎたのと水の攻撃とに疲れていたので、言い争いは避けて、横向きにソファーの上であぐらをかいた。

 よしよし、といいながら、正輝が後ろに座ってドライヤーのスイッチを入れる。

 適度な距離でドライヤーを動かして私の短くなった髪を乾かし始めた。確かに、上手い。熱さを感じることもなく、指で髪をすいてくれるのは心地よかった。

 お腹空いてなかったら寝てるかも、と思うくらいに。

 俯き加減にして、黙ってされるがままにしていたら、後ろでうーん・・と正輝の唸りが聞こえた。

「・・・何?」

 心地よさにぼーっとしながら、私は聞く。