「ごめん、お先」
声に思わずパッと振り返って、風呂上りの超ラフ&レアな正輝を見てしまった。
6年の付き合いで部屋に上げたことはあったけど、お風呂を使わせたことは勿論ないから、一瞬固まって見詰めてしまった。
・・・・・うわあ。
やつの登場と共に、どっかのコーヒー会社がCM使っていた「だばだ~だ~ば~だばだ~だばだ~♪」って音楽が大音響で頭の中を流れた。
「翔子?」
整えてない黒髪の頭を傾けて正輝が不思議そうに聞くのにハッと意識が戻り、慌てて背中を向けて照れ隠しにベラベラと喋る。
「こっ・・・コーヒー淹れといたから飲んでおいてね。服は乾燥機に入れるから、乾くまでしばらくそのままでいて。じゃあ私入ってくる!」
そしてまた無駄にバタバタと浴室まで走る。
ドアを後ろ手にしめて背中をつき、はあ~っとため息をついた。
・・・・ああ、やばかった。あんまりにレアすぎて、凝視してしまった。
いつもの爽やかなスーツ姿でなく、はたまたベロベロに酔っ払って潰れたどうしようもない姿でもなく、プライベートな、風呂上りなんていう物凄くプライベートな格好を見てしまって頭に血が上がってしまった。
ダメダメ。落ち着け、私。あっさりとそのままやつの裸まで想像してしまった自分をきつく戒める。それは浴室の壁に頭を打ち付けることでパスした。
取り合えず体を温めないと風邪を引いてしまう。痛む額を手で押さえて体を動かした。
深呼吸をして、正輝の服を洗濯機に突っ込み、洗濯のち乾燥コースでセットして、お風呂場に突入する。



