告白しよう。私はちょっと期待した。

 判るよね?期待したって仕方ないでしょ?

 でもちょっとだけだ。ほんとーうに、ちょっとだけ。そのくらいは許されるべきでしょ。だって、この流れのままいけばもしかしてって。ドラマや漫画ではよくある展開だもの、もしかしたら―――――――

 私をじっと見下ろしながら、正輝は真剣な声と表情でこう続けた。

「俺がお前につきまとうと、それの邪魔になるのか?」



 ・・・・ダメだ、こりゃ。



 私はがっくりと肩を落とした。

 だーめだ、こりゃ。全然脈なし。さすがに気付くかな、と思ったんだけど。ここまで何にもないと逆に笑えてくる。

 周囲は雨風、台風並みの大嵐。恋が実らない私と完璧な舞台設定。私の物語は4年前から停滞状態。晴れ間を求めて踏み出したのに、低気圧は背中に引っ付いてきた。

 疲れて私は雨の中足を踏み出した。

 もう全身濡れても鞄がダメになっても化粧がおちて酷い顔になってもいいやと思った。このバカ男と一緒にいたら、体力も気力も全部なくなってしまう。

 帰ろう。自分の部屋へ。帰ろうっと。

 豪雨の中スタスタと歩いていく私を慌てて追いかけて、正輝が傘を差し出してくる。

「おい、翔子―――――」

 私は無視した。まっすぐ前だけをむいて歩いていた。