「私はあんたのママじゃないわよ!!」

 風で吹き込んでくる雨を傘でよけながら、私の剣幕に正輝は大げさにのけぞった。

「勿論だ。そんな事思ってない。翔子は俺の大事な―――――」

「「友達」」

 またハモってやったぜ、と。

 ちっとも向上しない地位にイライラする。だから手放したのに。一生懸命逃げてるのに。何で何で何で―――――――

 私の殺意が宿っているだろう瞳を見て多少たじろいだようだが、正輝は果敢にもまだ続けた。

「不安なんだ!翔子に会えないかと思うと会いたくなるし――――」

「・・・それを歴代の元カノに言って、復縁を願ったらどうなのよ?毎回振られてあっさり諦めてないで」

 ヤツはポカンとした顔をした。

 全く、ちぃーっとも、そんな事考えてませんでした、てマヌケ面が語っていた。

 くそう、イライラする。私は雨が叩きつけるコンクリートを睨みつけた。

「話になりゃしないわ。私が今言ったことを今度の恋愛では実行して頂戴。以上、話は終わり!これ以上私はあんたの面倒を見切れない――――」

「好きな男がいるのか?」

 遮られた。その、正輝の真剣な声に、思わず目を合わせてしまった。

 いそいで逸らして下を向き、ぼそりと呟く。

「―――――――いる」