「優先順位って言葉があるの、知ってるか?」

 くらりと来そうになった。・・・・これよね。何だかんだと言って、いつも正輝が惚れた女を彼女に出来た理由は。

 フェイントで、真っ直ぐくる言葉に揺れるんだ。

「・・・そういうのは好きな女に言う台詞じゃないの?まだ新しい恋は見つからないわけ?」

 視線をそらしてそれだけ言った。目を見てなんか、絶対いえない。

 雨音がザーザーうるさくて、言葉が届かないからつい近寄る。湿った空気で髪の毛が額にひっつくのが不快だった。

「そういえば、無いな、最近。いいなって思うような女の子」

 どうでもよさそうに言うなっつーの。こっちは死活問題なんだよ。イライラと頭の中で突っ込む。

「お願いだから、さっさと新しい恋愛してちょうだい。そして私を放っておいて」

 私が放り投げるようにそう言うと、隣から飛んで来るのがむすっとした声に変わった。

「お前なしで、安心して恋愛なんて出来ない」

「は!?」

 私は思わずヤツを振り返って凝視する。もうガン見だ、ガン見。・・・何だって?今、この男、なんて言った?

「支えてくれるのに甘えてたらダメなのは判ってるんだ。でも、大きいんだよ。後ろで翔子が居て――――」

「はああ!??」

 ふーざーけーんーなああああ~!!!

 大爆発だ。もう、ムカついたぞ~!!頭の中のイメージは火山の爆発。真っ赤なマグマがドロドロと襲い掛かる映像だった。

 手で鞄をきつくきつく握り締めた。