run and hide



「大事な友達だ」

 正輝の返答にこっそりと拳を固める。

 まだ言うか。もう判ったって、友達なのは。

 マスターが気をきかせて隣の小部屋に消えた。

 正輝は私をじっと見ている。

「聞かせてくれ。そのシンプルな理由を。何で俺から逃げるんだ」

 私は無視してマスターを呼んだ。

「マスター、消えないでくださいます?お会計お願いします」

「おい、翔子――――」

「うるさいわね。マスター!」

 声を大きくしたら、申し訳なさそうな顔でマスターが出てきた。可哀想だけど、今は私の盾となって貰うんだから。

 テキパキと清算をして、マスターに笑顔を向ける。

「すみません、お騒がせしました」

「いえ、大丈夫ですが・・・」

 マスターはちらりと正輝を伺う。私も正輝を振り返ってみた。実に真面目な顔で。

 やつは機嫌を損ねた顔で私を見下ろしていた。
 
「もう本当に止めて。追いかけてこないで。ただの友達に執着心もちすぎじゃない?」