「えっ?ちょっと――――」
「ごめんなさい!そしてお願い!!隠れさせて~!!」
バタバタと叫びながら私はカウンターの後ろにしゃがみ込む。
と、同時にドアがチリンと涼しい鐘の音を立てて開いた。
私は座り込んだまま身をすくめる。
マスターは驚いておろおろと私を見ていたけど、ドアベルに反応して出した声はいつも通りの落ち着いた声だった。
「――――いらっしゃいませ」
そして、カウンターを回って客席の方へいき、お客さんを誘導して戻ってきた。
その手には私のストール。
あ。鞄は引っつかんできたけど、それ忘れてた!
私は縮こまったまま恐縮して、両手を顔の前で押さえて感謝を伝える。
「――――――ビール、下さい」
声が聞こえた。マスターがはいと返事をして準備に入る。
私はそろそろと体を避けて仕事をするマスターの邪魔にならないポジションまでしゃがんだまま動きながら、汗をかいていた。
・・・・やっぱり、正輝だあああ~・・・。
さっきまで私が座っていた席の隣くらいに座りながらため息をついてるようだった。
私は緊張してドキドキしながら身を小さくする。
ビールを出したマスターが、正輝にも、お疲れですね、と声をかける。
「・・・はは、疲れてるように見えますか?」
正輝の声。



