「待ち合わせですか?」
え?と私は顔を上げる。
「待ち合わせ?」
マスターはカウンターに入って少し首を傾げた。
「いつもの男性の方と」
・・・ああ、正輝と。
私は目を伏せて首を振る。ここには一人でも来ていたけど、確かに正輝ともよく使った。それで今日も待ち合わせかと思ったのかな。
私の反応を見て、更に不思議そうにマスターは続けた。
「あ、待ち合わせではないんですか。あの方もここにいらっしゃいますよ、多分」
――――――――何だって!?
椅子にもたれていた私はがばっと身を起こした。
「―――はいっ!?」
私の勢いにビックリしたらしいマスターは目を見開いたけど、指を入口のほうに向けて言った。
「・・・・さっき、駅からこちらに歩いてくるのを見ました」
えっ!??
私はパッと入口の方を見る。
正輝が来る!?ここに!?なんで判ったんだろう。ヤバイ、ここではすぐ捕まっちゃうじゃん。何とかしないと――――――
私はとっさに椅子から滑り降りて、マスターが入っているカウンターに回りこんだ。



