「なぜ、可愛い小鳥さんは泣いているのかな?」
投げ捨てた扇を拾われそう笑われた。だが、今はその優しさは邪魔以外の何ものでもない。何も知らない人にしてみれば、この忌まわしい楔をほどけないのは理解できないはず。優しくされたって、逃げられない。
「貴方は、ここに自分の意志で来られたのですか? 自分で決めて、自分の足で」
「ええ。日本の文化にとても興味がありますので」
扇をひらひらと舞わせながら、その外国人は笑う。
ブランド品のスーツにネクタイに時計。その時計は百万はくだらない高級品。
お金持ちの御曹司が自由気ままにできるのを、美麗はただただ醜い嫉妬で見上げていたのかもしれない。



