彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)





喫煙所で、煙草の休憩を入れて一息入れていた。

書類整理で疲れた目で外を見る。

夜の静かさが、この場所の周辺だけに思え、胸の辺りがムズムズした。

そこへ、うるさい奴が飛び込んできた。



「『フジワラ』さん!」

「『フジバラ』だ、ボケ!覚えろ、高学歴が!」

「さ、差別ですよ!?僕には、『岩倉』という名前があるんです!」

「だったら、俺の名前も覚えろ。」

「す、すみません・・・・!」



そう言って謝るのは、今年配属されてきた岩倉というお坊ちゃん。

のんびりしてるが、生真面目で、ちっとばかし頑固な男だ。

良い家柄のご子息様で、このままいけば、キャリア組として俺を追い越して出世するだろう。

経験の少ない俺の下で、将来警部になるために勉強したいんだと。

『上』もそれが好都合らしい。



「オメー、第一中学の補導の件はどうしたんだよ?」

「終わりました。今後は、他の機関とも連携して、少年少女を補導できるようにしてきました。」

「そうかい、報告ご苦労さん。」

「はい!それでは失礼――――――――しないんですよっ!そんなことを言うために、『自分』は来たのではありません!」




くそまじめに言うと、俺へと突っかかるように近づく若造。

こいつが自分を『僕』じゃなくて『自分』という時は、大体が仕事がらみだ。



「それで?今度は、どんな大ごとだぁー?」



大体が、しょうもないことばかりだ。

煙草の火を消し、喫煙所から出る。



「あ、待ってくださいよ!」



俺の後を、岩倉も追ってくる。

話半分で聞こうとする俺に、若い部下は声を荒げて言う。




「フジバラさん!少年安全課の責任者ならばご存じとは思いますが、『龍星軍』という暴走族をご存知ですか!?」

「・・・・龍星軍。」



―おじさん!!―




それで、昼間の出来事がフラッシュバックする。

ついでに、鼻の痛みも思い出した。



「・・・ここらじゃあ、誰でも知ってるよ。」



寒心のないふりをして、普通の答えを返す。

そして、そっけなく聞いた。



「急になんだよ、オメー?その龍星軍のサインでもほしいのか?」

「悪い噂を聞いたんです!!」



話半分で聞けば、真面目な顔で俺に言う。

真面目が長所という部下の言葉に、俺は頭をかきながら答えた。