指から伝わるぬくもりに、これが現実なのだと実感する。
「瑞希お兄ちゃん・・・・!!」
「な・・・・!?なんだ、お前・・・?」
怪訝そうに私を見る瑞希お兄ちゃんに、目元が熱くなる。
「あ・・・会いたかった!会いたかったよ、瑞希お兄ちゃん!!」
「ええ!?お、お兄ちゃんだぁ・・・!?」
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!瑞希お兄ちゃんっ!!」
ボロボロ泣きながら、私を後ろから持ち上げている人に縋り付いた。
「ごめんなさい!ごめんなさい、ごめんなさい!瑞希お兄ちゃんからもらったウサギ、壊されちゃって・・・」
「へ?ウサギ??」
「こ、これ・・・!これぇ・・・!!」
壊されたブレスレットを差し出せば、困惑しながらも意味を察してくれた。
「もしかして・・・さっき、庄倉が壊したものか・・・?」
「大事にしてたんだよ!?毎日手入れして、めったにつけないようにして!本当に、取り扱いに気をつけて、極力身に着けないようにしてたの!!だけど・・・」
壊れてしまった。
壊されてしまった。
「瑞希お兄ちゃんに返す日まで、大事にしようって決めてたのに・・・なのに・・・!!」
視界がゆがみ、瑞希お兄ちゃんの顔がゆがむ。
それが怒っているように見えて、ひどく怖くなった。
「ごめんなさい、瑞希お兄ちゃん・・・!」
嫌われたくなくて、嫌ってほしくなくて、必死で謝った。
「お・・・・おいおい!マジでお前・・・!?」
「ブレスレット壊してごめんなさい、瑞希お兄ちゃん!だけど、ちゃんと約束守ったよ!?」
「約束・・・?」
「瑞希お兄ちゃんの言う・・・・いい子になって、強く子になって、また会える日まで、ちゃんと、強くなったよ!?」
「強くなる?」
「だからね!なんとかするから!ちゃんとこれ、綺麗にするよ!直せる限り直して、瑞希お兄ちゃんに、返すから!だからーーーー!!」
嫌いにならないで。
「もういなくならないで・・・!!」
6年分の願いを込め、その胸にしがみついた。
「お前・・・・」
「ううう・・・会いたかった!ずっと瑞希お兄ちゃんに会いたかった・・・会いたかったよ、瑞希お兄ちゃん・・・・!!」
謝りながら、会えたことへの喜びと、嬉しさをかみしめる。
これに、瑞希お兄ちゃんは・・・・
「いなくならねぇから、もうやめろ。」
ゆっくりと私の体を地面へと降ろしながら告げる。
「タイマンは、お前の勝ちだ。」
そう言って、私の頬を流れる涙をぬぐう。
ずれていたマスクを引き上げながら、微笑む瑞希お兄ちゃん。
「わかったな・・・・?」
「・・・うん。」
鼻をすすりながらうなずけば、にやっと笑って頭を撫でられた。
くしゃくしゃに撫でながら、胸板に頭を押し付けられる。
抱きしめられる。
「あ・・・。」
(あの時と同じ。)
1人で泣いていた時と同じ抱擁。
優しく包み込んでくれる腕のぬくもり。
「瑞希・・・お兄ちゃん・・・・」
あたたかい。
満たされる。
愛しくて大事な人から与えられる体温が心地よい。
(やっと会えた・・・・!!)
その夜は、私にとって忘れられない最高の日になった。


