彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)





きっと、庄倉という男は当分起きない。

加減もしないで、首を絞めた。

頭の方も、結構蹴ったので動かないだろう。

死んではいない。

だって、ピクピク動いてる。

独特のアンモニア異臭がしたから、失禁するほど苦しかったのだと思った。

もはや、完全な敗者だから、これ以上痛めつけてはいけない。

いけないけど・・・






チク。



「あ・・・」






手に走った痛み。

見れば、壊された宝物が手に刺さっていた。

絶対に、元に戻らないほど変形していたブレスレット。

瑞希お兄ちゃんの一番の手掛かりだった品。

唯一の思い出の・・・・







「降参って言わないと、終わらないんだよね?」






比較的冷静な声で、立ち尽くしている庄倉の仲間に聞いた。








「タイマンは、どちらかが降参しないと終らないんだよね?」

「え!?いや、あの・・・!」



「私は降参する気はない。」






そう告げて、足元で動かない庄倉に手を伸ばす。





「起きろ。」

「ごほ!?」





本来ならば、してはいけない。

闘う気がない者を、何度も攻撃してはいけない。





「起きたか?」

「あ・・・あっ・・・ああ・・・!」





戦意をなくした者と、勝負がついたのに戦ってはいけない。







「本番まで、30分はあるんだろう・・・・!?」






収まらない怒り。

思い通りにならないお兄ちゃん探し。

会えない辛さ。

それらすべてが負のエネルギーとして私を動かす。




「あーそーべーよー」




胸倉掴んで立たせ、ハイキックを与えた。





「ぎゃ!?」




予想以上に飛んで、土の上を転がる。

これで、傍観していた味方も動いた。






「ふ、ふざけるな!こんなタイマン無効だ!」

「庄倉さんを守れ!」

「羅漢の意地にかけてもー!!」





何が守れだ。





(私だって、守るために――――――――――――――――――!!!)




”凛。”







「――――――――――――――――――ああああああああああ!!」







また、何かが切れた。

ごちゃごちゃ言ってる少年達を、片っ端から殴り飛ばした。

みんな、短く叫びながら倒れていく。