彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)




私の決意は、敵の耳には届かなかった





「あ?なんか言ったか?」

「おい!やりすぎだぞ!!」




私の声が聞こえなかった庄倉が、こちらをのぞき込むながら聞く。

それに合わせて、背後から声がした。





「百鬼さん。」

「庄倉ぁ・・・今のはお前が悪りぃ!そこまでする必要あっか・・・!?」

「『必要悪』って言うじゃないですか?もしかしたら、『龍星軍』の後継者になるかもしれない俺に、舐めた真似するとどうなるか教えとかなきゃダメでしょう?」

「ほお~!自転車で引かれた仕返しじゃないのか?」

「やられたら、やり返すでしょう?」



「そうだね。」






2人の男の声に、静かな声が重なる。






「わからないものね・・・やられてみないと・・・」

「お前・・・」




意外なほど静かだった自分の声。

言ったのが私だとわかった庄倉が、からかいながら聞いてきた。





「あ?なによ、マスクちゃん?俺とタイマンする気になった?」

「うん。」

「はああ!?ちょ、馬鹿言うなよお前!」






私の言葉に、立ち尽くしていた円城寺が叫ぶ。






「そいつは、オメーが倒した大場とはわけが違う!場数が違うんだぞ!?」

「へえ~こいつ、大場を倒したんだ?やる~?」





ヒューと口笛を吹くと、座り込み、私に目線を合わせながら言った。





「じゃあ、タイマンしようぜ。大場は俺の大事な仲間でもある。円城寺がちっとはマシになるまで、つなぎしろよ。」

「タイマンて、どうやるの?」

「ぶっ!?そんなんも知らねぇーのかよ!?」





爆笑すると、私の頬を手で軽く叩きながら言った。






「スタートって、言えば始まりだ。どっちかが動かなくなるまで続く。降参するって言わなきゃ終らな・・・」

「わかった。」





庄倉が言い終わらないうちに、私は告げた。









「スタート。」









自分でも意外なくらい、静か声。

自らの手で火ぶたを切った。







「お前を殺す。」

「は?」







壊れたブレスレットを握りしめ、壊れた心で宣告した。