彼は高嶺のヤンキー様(元ヤン)




さっきまで、死んだように眠っていた少年。






「円城寺大河君!」


(よかった!気が付いたのね!?)






ホッとする気持ちもあって名を呼べば、ギロリと睨まれた。





「・・・余計なことしてんじゃねぇーぞ、テメー・・・!」

「へ?」





これに円城寺君は、吐き捨てるように言う。




(余計なこと・・・!?)




運べって言うから運んだのに、余計なこと?




(え?なにこれ?私、文句まで言われてるの・・・?)




〔★円城寺からの、会心(かいしん)の一撃★〕
〔★凛に90のダメージを与えた★〕




タイマン要請だけじゃなく、苦情まで言われ、ショックで動けない。

円城寺君は、そんな私から視線をそらすと、背が低い男の子の肩を押して立ち上がる。





「秀、悠斗、世話かけたな。」

「ば、馬鹿野郎!そう思うなら心配かけんなよ・・・!」

「そうだぞ!つーか、大河!お前マジで大丈夫なんか!?」




ふてくされるながら言う悠斗という男子と、その隣で円城寺君に顔を寄せながら聞くのが秀と呼ばれているノッポの男子。

背の高い方が、かろうじて私のところまで聞き取れる声で円城寺君に聞く。






「お前もだけど、こいつは誰だ・・・?俺らに内緒の秘密兵器か?」






その問いに円城寺君は鼻をならしながら、同じ音量で返す。






「黙って聞いてろ。」





それだけ言うと、彼らから離れた。

ゆっくりだったが、しっかりとした足取りで歩くと、1人の男の前で止まった。






「百鬼さん。」




それは、私にタイマンを勧めた男。








「戦うのは俺です。庄倉は俺が倒す・・・!!」







そう語る眼は、真剣そのもの。






(これは・・・すべてをかけている人の目だ・・・)






私でもわかった。

格闘技をしているからわかった。

彼が本気で戦おうとしていることが。

そんな円城寺君に、この場の責任者らしい百鬼という名の男が聞く。





「ふーん・・・やる気はあるのか?」

「当然・・・!」

「それなら別にいいぜ。けどよー・・・」





円城寺君を見た後で、私や彼の仲間を見ながら百鬼は言った。





「寝起きで運動されても、見てて面白くないんだわ。」

「あん・・・!?」

「はい?」


(面白くない?)





真剣勝負に相応しくない単語。

思わず耳を傾けていれば、奴は言う。





「どうせ、決勝戦も最後の1人になるまでするわけだ。羅漢とオメーらじゃあ、人数からしても不利だ。ハンデぐらいいるだろう?」



「ハンデ、ですか?」

(ヤンキーの喧嘩にも、ハンデとかつけるの?)





思わず、そんな疑問を声に出してしまう。

それに気づいた百鬼は、ニヤニヤしながら言った。






「そうだ。」






私を見つめたまま、全員に言い聞かせるように告げる。






「お前、円城寺のためのハンデになりな!30分ぐれー庄倉と手合わせしろよ。」

「えええええ!?」




男が言ったのは、完全な命令形だった。